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初歩の電波(無線と電波について)

  • 2010.03.02

第4章 さらなる理解へ

ここでは、これまでに電波に関連する概要説明をした中で分かりにくい内容をさらに詳しく、テーマを絞って説明します。多少難しい部分も含まれますが、これにより理解が深まり、さらに興味を持ってもらえるように願っております。

4-10) ケーブルの特性インピーダンス

ケーブルは通常、2本の導体から出来ており、その中を電流が流れます。このケーブルには、厳密に考えますと、わずかずつの抵抗分、コイルの成分、コンデンサの成分が存在します。話を分かり易くするために、コイルの成分、コンデンサの成分だけに注目しますと、等価的に下図の伝送線の部分のように考えられます。高周波のことを考えますと、コイルの性質は、周波数が高くなるほど電流を通しにくくなります。逆に、コンデンサは、周波数が高くなるほど電流を通しやすくなります。

インピーダンスとは、直流を流した時と高周波の信号を流した時とで同じように影響を受ける実際の抵抗、及び直流の時の抵抗とは全く効果が異なるコイルやコンデンサの等価的な抵抗分のことを総合的に言います。直流で抵抗に電流を流しますと、電流に対して流れを阻止する抵抗力のために熱が発生し、電力を消費します。一方で、高周波における理想的なコイルの成分、コンデンサの成分による抵抗分(等価的な抵抗)は、周波数によりその影響は異なり、一見、抵抗のような働きはしますが、熱を消費することはありません。まとめますと、インピーダンスとは、実際の抵抗分、純粋なコイルの成分及びコンデンサの成分による抵抗分のことを総称して言い、単位は、抵抗と同じでΩ(オーム)です。

直流の場合には、下図に示すC0(浮遊キャパシタンス : 容量)やL0(浮遊インダクタンス)は、全く問題(影響がない)にはなりませんが、周波数が高くなるにつれてその影響が出始めます。単純に考えますと、伝送線に電流を流す場合に、周波数を次第に上げていくと、直列のコイル(L0)のために電流は流れにくくなり、また、並列のコンデンサ(C0)のために電流が分岐して流れてしまい、伝達する分が減ってしまいます。そのように考えますと、周波数が高くなるほど電流(又は電力)を伝達することが出来なくなりますが、ここで示すL0やC0は、図のような明確に単独の成分ではなく、分布して存在します。この様に、ケーブルは、L0とC0の分布成分から構成されることにより、上記の様な周波数変化に依存しない一定のインピーダンスを持つようになります。これは特性インピーダンスと呼ばれ、Z0=Root(L0/C0)として計算されます。現在使用されている同軸ケーブルのインピーダンスは、材質により異なる50Ω系と75Ω系があり、広く普及しております。

上図のように、信号源として電圧を加えて、Aでの電流と電圧の波形を見ると、供給源では、位相が同じだったものがずれることがあります。位相とは、上図の電圧と電流の波形の図で、波形の位置関係を言います。電圧波形の図形に記載のある一周期の波形の時間分を360度とした時の角度差(単位は度)を言います。ちなみに、上図の位相差は、概略で45度程度に相当します。位相のずれが発生しますと、信号(電力)が通りにくくなり、もし位相が90度ずれるとインピーダンスの不整合のために信号(電力)は全く通らなくなります。ただし、r = Z0 = Rの時、すなわち信号源のインピーダンス、伝送線の特性インピーダンス、負荷インピーダンスのそれぞれ全部が等しい場合には、不整合が発生しませんので、全ての信号、電力が伝わります。高周波の信号をケーブルで装置やアンテナに接続する場合には、インピーダンスの不整合が発生しないようにすることは、非常に重要なことです。