変電所の改修アプリケーションにおけるシステム冗長性は、分散型または集中型システムアーキテクチャのいずれかを使用して導入することができます。分散型アーキテクチャでは、各コンピュータが、1つのOSまたは1つのアプリケーションのみを実行する複数の物理コンピュータにより、ネットワークの冗長性が保証されます。一方、集中型アーキテクチャでのネットワークの冗長性は、同一物理サーバ(即ち、サーバ仮想化)上で、複数のオペレーティングシステムと複数のアプリケーションを実行することにより実現します。分散型と集中型のどちらのアーキテクチャでも、システムの冗長性を必要とする変電所にて効率的に利用することができますが、システムインテグレータは、多くの制御および管理の問題に対する保護に留意する必要があります。
停電の発生頻度と停電時間を減らすため、世界中の電力網は、制御、データ収集、監視の自動化が行えるよう、旧式変電所の改修を行っています。変電所オートメーションの傾向は、全てのインテリジェント電子機器(IED)とサブシステムからのデータを収集し、デバイス監視用および将来的に高度な診断を行うプラットフォームとして使用することができる、パワフルかつ安全な制御システムに統合していく方向に向かっています。
既存の旧式変電所を新しく構築して自動化設備に置き換えることは、一般的に実用的ではなくコスト高であることから、多くの変電所オートメーションアプリケーションでは、従来機器の改修やアップグレード、関連するサブシステムの統合に留まります。 特に、遠隔地での制御、データ収集、監督を無人で行う旧式変電所機器と、サブシステムの改修を必要とする際、変電所アプリケーションがミッションクリティカルな特質であるため、管理システムの冗長性が最も重要となります。さらに、変電所の自動化のための改修を実行する際、システムのダウンタイムを最小限に抑え、トラブルシューティングに多くのリソースを割り当てることができる管理システムの冗長性に留意する必要があります。
変電所を改修する際、システム事業者は制御や管理に関する多くの弱点を克服する必要があります。まず、不安定なアプリケーションがシステム上でクラッシュすると、システムエラーは、クラッシュしたアプリケーションに影響するだけでなくシステム全体をハングアップし、また、同じコンピュータ上で実行されている他のアプリケーションにも影響を与えます。
次に、旧式アプリケーションを移行するときに、制御や管理に関する問題が発生する可能性があります。例えば、多くの旧式変電所アプリケーションは、サードパーティベンダにより、古いバージョンのOS向けに設計されており、既にオリジナルのアプリケーションのサポートを終了していることが多くあります。その結果、最新のOSとハードウェアでこれらの特注ソフトウェアアプリケーションを使用するためには、単にファームウェアをアップグレードするだけでは対応できない、もしくは実行不可能かもしれません。そのため、多くの場合、エンドユーザは新しいOS向けに新しいアプリケーション開発を委託する必要がある場合があります。
変電所の改修アプリケーションにおけるシステムの冗長性は、分散化または集中化システムマネージメントアーキテクチャのいずれかを使い、実現することができます。
■ 分散化
分散型システム管理アーキテクチャにおいて、システムの冗長性は、1つのOSと1つのアプリケーションだけを実行する複数の物理的コンピュータにより保証されます。分散型システム上の各コンピュータは、1つのアプリケーションのみを実行しているため、ノード内に不安定なアプリケーションが1つでもあると、このマルチノードネットワーク内の単一障害点(single point of failure)となります。これらは同一物理サーバ上で複数OSと複数アプリケーションを実行する明らかな利点です。
しかし、アプリケーションごとに1つの物理的マシンを導入するため、このハードウェアベースのアプローチには、機器の追加やメンテナンスに対する諸経費が発生します。
さらに、分散型システム管理アーキテクチャにおいては、新しいコンピュータプラットフォームは通常、旧式OSのドライバをサポートしていないため、旧式アプリケーションの移行に関連する問題を克服できません。
■ 集中化
一方、集中化システム管理アーキテクチャにおいて、システムマネージメントの冗長性は、仮想化技術(例:VMware)を介して、同じ物理サーバ上で複数のOSとアプリケーションを実行することにより実現します。仮想化により、同じ物理サーバ上で複数のOSと複数のアプリケーションを実行することで、既存のx86ハードウェアの効率と利用率を高め、コストを削減することができます。
まず、サーバの仮想化では、異なるコンピュータ上で物理的にアプリケーションを分離する代わりに、、はるかに少ない物理サーバ間で多くの仮想マシンを統合することによりアプリケーション分離を可能にし、アプリケーションの互換性問題を排除します。
次に、総合的な可用性と耐障害性により、すべての仮想化アプリケーションを保護します。サーバやノードに障害が発生した場合、すべての仮想マシン(例:VMware)は、ダウンタイムやデータの損失なく、自動的に再起動するか、別のマシンで動作を継続させます。
最後に、従来の旧式アプリケーションを仮想化し、カプセル化することによって、効果的に旧式アプリケーションの寿命を延ばしてシステム稼働時間を維持することができ、さらには、ネットワーク上の老朽化した旧式の機器を最新のハードウェアに交換することができます。