過去10年の間にワイヤレス技術の進歩はすばらしく向上し、多くの産業用ネットワークが、有線からワイヤレスに移行されています。その理由は単純明快です。ワイヤレス通信は伝送ケーブルを必要としないので、有線ネットワークに比べてはるかに経済的かつ容易に実現可能であるためです。しかし、ワイヤレスを使う場合、帯域幅の制約があるため、ワイヤレスを介した映像伝送は現実的ではありませんでしたが、5年ほど前から802.11n および 3G HSPA技術が十分に成熟してきたため、産業用アプリケーションで使用できるようになりました。
IP監視システムが作成するデータの大部分がビデオデータであるため、現在の多くの産業用ネットワークは、ビデオデータの伝送をサポートする設計がされています。現在、これまで以上にセキュリティは重要視され、より高解像度のIPカメラの需要が高まっています。しかし、IP監視システムは、産業ネットワークインフラストラクチャにおいて膨大な帯域幅を必要とします。ワイヤレスネットワークを介してシームレスなビデオストリーミングをサポートするために、オペレータは、各カメラがどのくらいの帯域幅を必要とするかを理解し、同時に、データを伝送するために必要なネットワーク帯域幅の合計を計算する必要があります。
下記に示す2つの表は、ワイヤレス機器の設置準備に必要な重要な情報を示します。表1は、品質、解像度、FPSに基づいてリアルタイムビデオ伝送を実現するために必要とするネットワークの帯域幅の推定値を示します。表2は、異なるネットワークプロトコルによるデータレートと利用できる最大帯域幅を提供します。
ビデオ帯域幅パラメータ | 推定される帯域幅の要求 (*) |
---|---|
品質:良 解像度:640×480 FPS:20 |
1~2Mbps |
品質:優秀 解像度:720×480 FPS:30 |
3~5Mbps |
品質:優秀 解像度:1280×800 FPS:30 |
7~9Mbps |
* Moxaのオンライン帯域幅計算機 (英語サイト ) により作成
ワイヤレス技術 | データレート | 利用できる最大の帯域幅 |
---|---|---|
ワイヤレスLAN(802.11/WiFi)技術 (*) | ||
802.11b | 11Mbps | ≈5Mbps(距離に依存) |
802.11a/g | 54Mbps | ≈25Mbps(距離に依存) |
802.11n(2x2 MIMO) | 300Mbps | ≈150Mbps(距離に依存) |
802.11ac | 600Mbps≈ | 300Mbps(伝送距離に制限) |
ワイヤレスWAN(セルラー)技術 | ||
2G(GPRS/EDGE) | 86,236kbps | ≈100kbps(ISPに依存) |
3G(HSPA) | 14.4Mbps | 1~3Mbps(ISPに依存) |
Pre 4G(LTE) | 100Mbps | 20Mbps(カバレッジの制限) |
* Moxaのオンライン無線LAN範囲計算機(英語サイト )を使用して生成
ビデオデータとワイヤレスネットワーク帯域幅の両方の計算方法を知ることは、ビデオ・オーバー・ワイヤレスネットワークを計画するために不可欠な最初のステップです。必要なネットワーク帯域幅の総計は、ワイヤレスデバイス選択の主な決め手となり、デバイスが異なるアプリケーションシナリオの下でスムーズに動作することを保証するためにも重要です。
802.11ac および LTEは最新のワイヤレス技術ですが、相互運用性と受信範囲の観点から、産業アプリケーションで使用するにはまだ十分ではありません。現在のところ、ビデオ・オーバー・ワイヤレスを実現するために利用できる主な技術は、802.11nと3Gです。我々の経験に基づき、実際のアプリケーションを実行すると、産業用ビデオ・オーバー・ワイヤレス通信は次の3つのシナリオのいずれかに分類することができます。
交差点・工場・港湾の監視は、必然的に既存のノード削除や新規ノード追加を要するアプリケーションの好例のひとつです。よくある主な問題は、有線ネットワーク接続に縛られている場合、新規ノード追加のたびに新たにケーブルを追加する必要があるということです。ワイヤレス通信の使用が可能である場合、データラインケーブルを設置せずに新しいノードを容易に追加することができます。これを実行する際に考慮しなければならない2つの重要な点は、ワイヤレスの受信範囲とリアルタイム通信です。
必要とされるワイヤレス受信範囲の程度に応じて、Moxaは、異なる伝送距離をサポートするワイヤレスソリューションを提供します。通常300mの伝送半径内を意味するローカルワイヤレスネットワークにおいて、802.11ワイヤレスは、高利得のオムニ指向性アンテナの選択が適しています。長距離通信については、セルラー技術が、より安定したソリューションを提供することができます。
ワイヤレスの使用が決定した場合、リアルタイムのビデオ伝送を保証するために十分な帯域幅を提供できるネットワーク設計を採用することが重要となります。この点について、Moxaは、各カメラに必要とされる帯域幅をユーザが決定できる「ビデオ帯域幅計算機 (英語)」と、とデータレートの初期推定値、範囲およびAWKシリーズ製品がサポートするアンテナ利得設定を提供する「無線LAN範囲計算機 (英語)」の、2つの便利なツールを提供しています。
有線の配線が困難な環境において、ミッションクリティカルかつセキュリティが重要なシステムを動作している場合、ワイヤレス送信時のパケットロスは安全性と信頼性を危険にさらします。Moxaのデュアルワイヤレスソリューションは、産業用アプリケーションのためのパケット損失ゼロを実現する、独自のコンカレントデュアルワイヤレス技術を備えています。セルラー接続の場合、MoxaのGuaranLink機能は、データ損失ゼロとオンデマンドセルラー通信をサポートする信頼性と一貫性のあるセルラー接続性を保証します。
ワイヤレス技術の開発は、様々な形状やサイズの車両を、固定したネットワークに接続することを可能にしました。バス・地下鉄・トラックなどの運転の監視を含むアプリケーションにはすべて、ワイヤレス通信が現実的に使用できるようになっています。これらのアプリケーションに必要な条件は、車両に搭載されたワイヤレスデバイスが、あるアクセスポイントから別のアクセスポイントに移る場合にも、確実にスムーズなビデオストリーミングを保証することです。
Moxaはワイヤレスローミング技術のエキスパートです。Moxa独自のローミングアルゴリズムを用いたワイヤレスデバイスは、様々なミッションクリティカルな車両アプリケーションのワイヤレス通信をサポートするため、現在、広く使用されています。
前述した2つのアプリケーションシナリオは、一元化した通信を実現します。すなわち、1つ以上のリモートサイト(移動していてもよい)からのビデオストリームは、コントロールセンターに送られます。しかし、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末の普及に伴い、産業用ワイヤレスは、単に無線LANクライアントとしての役割を果たすだけではありません。一例として、旅客列車に乗客用Wi-Fiネットワークを設置することがあります。車載ワイヤレスWi-Fiアプリケーションの重要な役割は、多種多様な携帯デバイスにサービスを提供するために
必要な広帯域幅に加えて、信頼性の高いワイヤレスバックボーンネットワークをセットアップすることです。車両間通信では、日常において車両編成が頻繁に変更されるため、より簡単に設定と管理ができる優れたソリューションが必要です。Moxaの自動車両接続技術は、強固なネットワークセキュリティを維持しながら、以前は手動で行っていた、列車全体にブロードバンド通信を提供する新たなワイヤレスブリッジを確立するプロセスを自動化して、この問題を解決する設計となっています。
上記のシナリオからわかるように、タイプ別のビデオアプリケーションにはそれぞれ、異なる懸念があります。シナリオに関係なく言えることは、産業用ビデオ・オーバー・ワイヤレスネットワークを通じてシームレスなビデオ伝送を提供する、堅牢なハードウェア設計が要求されるということです。Moxaの産業用ワイヤレス機器は、どんな種類の産業用アプリケーションにも対応するように設計されています。-40℃~75℃のワイド動作温度範囲、振動耐性M12とQMAコネクタ、高レベルのEMS保護と、さまざまな産業認定は、信頼性のあるワイヤレス伝送を保証します。