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2024.06.17

【メディア掲載情報】工業技術社発行の「計装」2024年7月号に記事が掲載されました

「計装」2024年7月号

工業技術社発行の「計装」2024年7月号に、弊社企画開発部マーケティング課 田畑とMoxa Japan合同会社 Hunter Weng氏が共著で寄稿しましたBESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)に関する記事「再生可能エネルギーを支援するバッテリーエネルギー貯蔵システムの安全・安定稼働の実現」が掲載されました。

「これからのエネルギー管理最適化への着眼点と実践技術」を特集とした本号において、エネルギー貯蔵システムをさまざまな側面からサポートする信頼性の高いMoxaのソリューションを紹介しています。

MoxaのBESS特集ページはこちら

「計装」のお求めに関しては、発行元である工業技術社のWebサイトをご確認ください

https://www.ice-keiso.co.jp/index.html

寄稿記事

「再生可能エネルギーを支援する
バッテリーエネルギー貯蔵システムの安全・安定稼働の実現」

アイ・ビー・エス・ジャパン株式会社
企画開発部マーケティング課
田畑 千絵(タバタ チエ)

Moxa Japan合同会社
Hunter Weng(ハンター ウェン)

1.はじめに

再生可能エネルギーは、持続可能なエネルギー供給の中心的な役割を果たすと期待され、世界的に見ても、新規発電プロジェクトにおける再生可能エネルギー分野の占める割合が著しく増加している。一方で、「変動制再生可能エネルギー」の名の通り、太陽光や風力などの再生可能エネルギー由来の電力は、天候や気象条件により発電量が左右されるため、コントロールが難しい。電力供給の安定や電力網の最適化には、需要と供給のバランスを維持し、需要変動に対応するための調整力が欠かせない。そこで、再生可能エネルギーの調整力を向上させるために、余剰電力を貯蔵・管理するバッテリーエネルギー貯蔵システム(Battery Energy Storage System:以下BESS)が重要なツールとなる。

本稿では、導入のメリット・デメリットを踏まえ、堅牢性と高いEMC耐性、広い動作温度範囲を備え、極端な温度変化のある環境でも信頼性を発揮するMoxa社のソリューションにより、今後ますます注目されるであろうBESSの安全で安定した稼働を実現する方法について紹介したい。

2.エネルギー貯蔵の仕組みとサポートするMoxaのソリューション

BESSは、電気エネルギーをバッテリーに蓄え、必要な時に放出することで、電力の安定供給や効率的なエネルギー利用を実現するシステムであり、大きく分けて以下の4つの要素で構成されている。

  1. バッテリーマネジメントシステム(Battery Management System: BMS)
  2. 補助システム
  3. エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System: EMS)
  4. 電力変換システム(Power Conversion System: PCS)

それぞれの仕組みを以下に説明する。

(1)バッテリーマネジメントシステム(BMS)

BESSの中心となるのが、複数のバッテリーモジュールである。BMSは、バッテリーモジュールを管理し、安全かつ効率的な運用を行うために、バッテリーの充放電状態や温度、容量、などをモニタリングし、過充電や過放電を防止する。また、バッテリーの寿命を最大限に延ばすために、バランス充電などの機能を備えている。EMSとの通信にはCANまたはイーサネット通信が用いられる。

(2)補助システム

バッテリーコンテナの環境制御(温度、湿度、煙検知)や消防システム、アクセス(入隊管理システム)、無停電電源装置(UPS)、空調システムのモニタリングを行い、EMSにこれらの環境関連データを提供する。補助システムとEMS間の通信にはI/Oまたはシリアルが用いられる。

(3)電力変換システム(PCS)

バッテリーモジュールから得られる直流電力を交流電力に変換するための変換システムが必要となる。この変換システムは、バッテリーから供給される電力を家庭やビルの電気システムに適した形に変換する。PCSでは、CANインターフェースを介してBMSと通信を行いバッテリーの状態のリアルタイムデータを取得する。PCSとBMS間の通信にはCANまたはイーサネット、EMS間の通信にはイーサネットまたはシリアルが用いられる。

(4)エネルギー管理システム(EMS)

バッテリーエネルギー貯蔵システム全体を制御するための電力制御システムとして、電力の供給や放出を制御・調整し、需要と供給のバランスを維持して配電の最適化を行う。遠隔監視やKPI管理など、ローカル及びクラウドベースのデータログとデータ管理を行う。

Moxaは、イーサネットスイッチのEDSシリーズやデジタルI/OデバイスのioLogikシリーズ、シリアルデバイスサーバーのNPortシリーズ、ModbusゲートウェイのMGateシリーズなど、多彩なインターフェースに対応したデバイスを提供している。さらに、各種管理ソフトウェアを搭載するためのArmベースやx86ベースのIPCなど、BESSを接続するためのあらゆるデバイスが用意されている。

3.BESS導入における課題とMoxaからの提案

BESS導入における課題は、いくつかの側面がある。

BESSを活用することで、再生可能エネルギーの調整力が向上し、電力供給の安定性が増す。これにより、ピーク時の需要に応じて電力を供給することが可能となり、電力市場での収益を最大化できる。さらに、BESSを災害時のバックアップとして活用することで、追加の収益源を確保も期待できる。

一方で、BESSの導入には高い初期投資が必要であり、信頼性を保ちつつも、設置費用やメンテナンスコストの削減が鍵となる。また、導入までのスピードや、可用性の高い回復しやすいネットワーク構築、長期供給を見据えた持続的な供給とサービスの保証も考慮する必要がある。

では、どのように課題を克服し、BESSの安定稼働を実現したらよいか。

● 信頼性の高い機器を選択し、メンテナンスコストを削減

コスト面について長期的な観点で考えると、設備の耐久性を重視することが、メンテナンスコストの削減につながる。システムの故障は、重要なデータの損失につながる可能性があるのみならず、遠隔地やアクセスしづらい場所でのシステムメンテナンスには手間と時間がかかり、機会損失をもたらす。また、発電システムや貯蔵設備は強烈な暑さや寒さ、高地、腐食といった過酷な環境下に設置されることが殆どであるため、コンテナ内に設置する機器の耐久性は非常に重要な要素となる。

Moxa製品は、過酷な環境に対するさまざまな産業要求を満たしている。たとえば、IEC 60068-2国際規格に基づく振動、衝撃、落下テスト、IEC 61850-3準拠の変電所レベル要件に合わせたEMC保護、IP76の防塵・防水設計、換気のない環境下での-40~85℃の動作温度範囲、耐腐食性コンフォーマルコーティングで保護された回路基板など、厳格な信頼性試験を実施しており、MTBF(平均故障間隔)は業界トップクラスの高い信頼性を誇る。

● プロジェクトに素早く導入できる体制

ネットワークやシステムの専門家の不在や、変電所通信システムの複雑さ、システム間の通信連携やIPアドレスの管理、将来的な拡張性の考慮など、ネットワークの構築・管理のハードルは高く、スピードが求められるプロジェクトにおいては、これらがネックとなる。

Moxaは、IEC、CIGRE、UCAIugといった国際的な電力標準化ワークグループに深く参与しており、7,500以上のSASを展開、10GWh以上のエネルギー貯蔵システムを監視し、何千ものグリッド変換を成功に導いている。また、デバイスのIPアドレスを一括設定可能な「MXconfig」や、コンテナのIPを標準化し外部のホストによる不正なアクセスから内部ネットワークを保護するネットワークアドレス変換デバイス「NATシリーズ」など、IP管理と設定を合理化するシンプルな製品デザインにより、設計から設置、拡張にかかる時間およびEPC/SIのメンテナンス時間の大幅な短縮を可能にしている。

● 可用性の高いネットワークの構築

適切なネットワークトポロジーの計画と昨今増加するOTネットワークに対するサイバー攻撃への対策も忘れてはならない。日々進化するサイバーセキュリティリスクへの対応や適切なセグメントの構築、補助システムとの通信で多く用いられるOTプロトコル固有のセキュリティ脆弱性にも配慮が必要である。

Moxaは、Turbo Ring(ターボリング)/Turbo Chain(ターボチェーン)の冗長機能を活用し、産業グレードのネットワークトポロジーで20~50ミリ秒の回復を実現する。また、HSR/PRP冗長化技術を採用することで、IEC 61850電力通信規格に準拠したネットワークの復旧時間を0秒の実現も可能にしている。さらに、IEC 62443 OTネットワークセキュリティに準拠したソリューションを提供し、ネットワークセグメンテーションの展開による不正アクセスの防止や、攻撃を受けたデバイスの切り離しにより、重要な機器とデータを保護する。また、さまざまなOTプロトコルのパケット検知機能を搭載したセキュアルーターを使うことにより、OTプロトコルの保護を有効化し、デバイスの安定した動作を保証する。

● 長期供給を見据えた持続的な供給とサービスの保証

前述の通り、エネルギー貯蔵システムの導入には膨大なコストがかかるうえに、急速な技術革新と市場の変動の中で、投資の見通しを立てることは容易ではない。そのため、費用対効果を判断するには、通常15~20年の長期間にわたって運用する必要があると言われている。この点で、使用する設備や機器が長期間供給可能かどうかは極めて重要なポイントとなる。また、長期稼働するなかで、管理やメンテナンスにはネットワークの専門知識が必要となる。

Moxaは、製品の長期供給を確保するために、生産用の原材料やサプライヤーの確保、後継機種の継続開発に注力している。製品は産業グレードの堅牢な設計であり、製品寿命やMTBFに自信がある。これにより、メンテナンスコストの削減やリプレースサイクルの延長によるコスト削減が期待される。また、設定は基本的にWebUIから行うことができるため、ネットワークの専門知識がなくても容易に設定できる点も、長期運用するうえでのメリットとなる。

4.最後に

再生可能エネルギーの普及や環境への配慮がますます重要視されるなか、同分野への参入には持続可能なサービスの提供やエネルギー効率の向上など、さまざまな課題が存在する。将来に向けたシステムの構築や製品の選定においては、信頼できるパートナーシップの構築も重要である。

Moxa社は2020年に日本法人を設立し、製品の堅牢性に加えて、日本語でのサポートや現地支援などのソフト面でも国内のお客様の信頼を得ている。再生可能エネルギー分野における事業継続や収益拡大、新規参入に関する課題があれば、ぜひアイ・ビー・エス・ジャパンにお気軽にご相談いただきたい。

  • 本稿に記載の仕様や準拠規格について:製品によって仕様が異なるため、詳細はお問い合わせください。
  • 弊社Webサイトへの掲載にあたり、一部内容を改編しております。

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