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初歩の電波(無線と電波について)

  • 2010.03.02

第4章 さらなる理解へ

ここでは、これまでに電波に関連する概要説明をした中で分かりにくい内容をさらに詳しく、テーマを絞って説明します。多少難しい部分も含まれますが、これにより理解が深まり、さらに興味を持ってもらえるように願っております。

4-15) 変調

送りたい信号は、通常そのままでの形では空中に電波として発射することは出来ません。送りたい信号を、空中を飛んでいける電波に乗せる必要があります。例えれば、段ボール箱があったとしてこれを遠距離に運ぶ場合、勝手に動くことはなく、人が手で持って運ぶか、車に乗せて運ぶ等が考えられます。変調とは、搬送波(電波となる高周波)に送りたい信号を載せて空中に発射出来る形にすることを言います。

搬送波は、上の図の様に連続的な正弦波で、振幅も一定の高周波です。変調を受けていないので搬送波の持つ帯域は非常に狭いものです。逆に変調を受けた搬送波は、変調の方式により異なりますが、変調信号を含んだ分だけ幅が広がります。

変調を行う方式には、大きく分けて以下の3種類があります。

アナログ変調

これは、アナログ信号で搬送波を変調する方式です。この方式の中にも大きく分けて3種類あります。

AM(Amplitude Modulation : 振幅変調)

上の図で、左は、搬送波(波形が見えている)が変調信号で変調を受け、振幅が変化していることを分かり易く示しています。右の図は、搬送波(波形の詳細が見えていない)の周波数が非常に高いことを示していますが、現実的にはこのように見えます。同じように振幅変調を受けた信号ですが、搬送波の詳細が見えているかどうかの差です。この場合、中心から上下が対象になっておりますが、その場合の包括線が元の変調信号です。 代表的な例はAMラジオです。AMラジオの場合、例えばNHK放送の周波数は530kHz~600kHz程度ですが、変調信号は7kHzの帯域となっており、その比率は約80倍程度です。

FM(Frequency Modulation : 周波数変調)

右図は、変調信号により変調を受けて周波数が変化していることを示します。振幅は一定で周波数そのものが変化を受ける方式が周波数変調です。代表的な例としてFM放送があり、この方式は、AM変調と比べて周波数帯域は広くなりますが、忠実度(音質:ノイズが少ない、信号帯域が広い、音の歪がない)が高くなります。

PM(Phase Modulation : 位相変調)

右図は、途中で波形が折り返す形になっていますが、本来、連続で滑らかな正弦波が途中から変化し、波形が時間的なずれを起こしています。これは位相がずれていることを示し、位相変調と呼ばれます。あまり使用例はありませんが、PSK等(後述)に利用されています。

デジタル変調

これは、デジタル信号で搬送波を変調する方式です。この方式には、右図の様にASK(Amplitude Shift keying : 振幅偏移変調)、FSK(Frequency Shift Keying : 周波数偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying : 位相偏移変調) の3種類があります。それぞれ、デジタルの変調信号に応じて、搬送波の振幅、周波数、位相が変調を受けます。

実際の利用例として、ASKはモールス符号通信、FSKはデジタル移動通信、PSKは移動体通信や衛星デジタル放送に使用されています。

パルス変調

これは、信号でパルスの振幅、幅、位相などを変化させて変調する方式です。これらは、大きく分けて、

  • PAM(Pulse Amplitude Modulation : パルス振幅変調)
  • PCM(Pulse Code Modulation : パルス符号変調)
  • PWM(Pulse Width Modulation : パルス幅変調)
  • PPM(Pulse Position Modulation : パルス位置変調)

の4種類があります。

パルス振幅変調:PAM

これは、元の信号(変調信号)をある周波数の周期でサンプリングして、その周期で振幅をパルス化する方法です。イーサネット通信でPAM5として利用している例があります。

パルス符号変調 : PCM

これは、パルス振幅変調の様に振幅を変換しますが、パルス列のコードに変換します。下の図は、振幅を16レベルに分類し4ビット(4つの1、又は0で現わす)のコードに変換します。実際のレベルは、それぞれの時間に対して図の右側に示す「4ビット表示」の値に変換されて表示されます。使用例として、音楽CD等の書き込みがあります

パルス幅変調 : PWM

右下図の様に、信号をパルスの幅に変換します。例として鉄道のモーターをPWM方式でデューティーサイクル(通電する割合のことで、100%は常に通電、0%は全く通電しない)を変化させることで速度を調整しています。

パルス位置変調 : PPM

右図の様に、信号を周期に対する時間的なパルスの位置に変換します。位相制御装置の制御パルスとしての利用例があります。

利用する変調方式は、用途に応じて変わりますが、組み合わせも含めてもっと多くの方式が考えられています。