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製品・技術情報

初歩の電波(無線と電波について)

  • 2010.03.02

第4章 さらなる理解へ

ここでは、これまでに電波に関連する概要説明をした中で分かりにくい内容をさらに詳しく、テーマを絞って説明します。多少難しい部分も含まれますが、これにより理解が深まり、さらに興味を持ってもらえるように願っております。

4-17) 電波を見る測定器

ここでは、電波を見るための基本的な測定器について概要のみを説明しますが、実際に利用されている電波応用機器の全ての特性を測定するにはもっと多くの複雑な測定器が必要になります。また、最近は特にソフトウェアを利用した装置が増えておりますので、本来、それらの測定器も必要となりますが、ここでは省略します。

測定の3要素

ハードウェアの測定に関連して電気信号を分析、解析する上で重要なものは、主に以下の3つの要素です。

  • (1) レベル : 「振幅、信号強度、電力」等
  • (2) 時間(t)
  • (3) 周波数(f) f(Hz) = 1/t(s)

ここで基本的なことを説明しますと、実は、周期性のあるどの様な波形でも全て正弦波の合成で生成可能であることが数学的に証明されております。電波も電気信号の一種ですので、このことが当てはまります。

例として、右の図は矩形波(台形の波)に近い青の太い線の波形が、破線の4種類の波形を合算すると得られることを示しています。ただし、それぞれの周波数とレベルは異なります。この場合に周波数はそれぞれ、基本波(正弦波)、3倍波、5倍波、7倍波(7次の波)となります。しかもこれらの奇数倍の波は全て正弦波です。7倍波までの合成でもかなり矩形波に近くなっております。これをもっと増やしていけば、ほぼ矩形波になります。このようにどのような波形でも正弦波の合成で得られることが予想できると思います。
詳細は後で詳しく説明します。オシロスコープやスペクトラムアナライザの測定に関係する内容ですので記憶に留めて下さい。

測定の目的

目的としては、信号の要素が何か、レベル、時間、周波数等を測り、それを基にどのような特長があるのかを抽出します。最後にこれらを総合的にみて解析を行い、データとしてまとめます。これらのデータを集め保存することにより、ある装置が異常になった場合に測定を行えば、過去のデータとの比較により異常個所の発見が容易になります。また、製品を大量に生産し、その製品の出荷品質を保つためには、データを取り比較することで短時間に効率良く良否を判断することが可能になります。
測定器の精度、確度がきちんと確保されていれば、取得データは、研究、開発、量産検査等色々な場面で非常に有効なものになります。

データ表現方法

データの表現で最もシンプルなものは、一次元の表現としての電圧、電流、電力、抵抗値、C : コンデンサの容量、L : コイルのインダクタンス等のレベル計で、メータの振れや、数値で表したりします。 複雑な内容は二次元の表示を行いますが、代表的なものとしてオシロスコープ、スペクトラムアナライザ、ネットワークアナライザ等多数あります。場合によっては三次元表示を利用したくなりますが、表現の仕方に難しさがあります。本来上記「測定の3要素」で示した内容を全部まとめて分かり易く表現できれば良いのですが、現状なかなかうまく出来ておりません。

1.オシロスコープ

オシロスコープとは、下記の図に示すように横軸に時間を、縦軸に電気信号(電圧)の変化をリアルタイムに画面に表示し目に見える様にした、二次元で観測できる波形の測定機です。オシロスコープでは、実際はf0のみが観測されますが、上記「測定の3要素」のところでも関連性を説明したように、実は分解すれば f1、f2、f3から成るものです。オシロスコープは、この様に合成された結果だけを表示し、その詳細の成分を表現することは出来ません。

具体的には、ブラウン管上に時間軸と振幅軸上に入力された信号を点として非常に高速に表示して繰り返しますので、画像が止まって見えます。ただし信号の周期性が一定でない場合には、止まって見えることはなく画像は流れてしまいます。

オシロスコープは、基本的に電気信号を表示しますので、温度、湿度、速度、圧力、音声等、何でも電気信号に変換出来れば同様に表示することが可能です。ただし、レベルの表示に関しては、それぞれ内容が何であるかを示す必要があります。

また、オシロスコープが物理的に針を使用したメータと異なるのは、メータの針には重さがある為にそれほど速い動きは期待できませんが、電子的に表示出来るオシロスコープは非常に高速です。その意味では速い変化や突発的な事象も捉えることが可能になります。現在は非常に高い周波数を扱う製品が多数出てきており、それらに対応できる高周波用のオシロスコープも出てきておりますので、非常に重宝な測定器と言えます。さらに、高級な製品になりますとデータをアナログ的またはデジタル的に保存しておき、後ほど波形を比較するとか、高速で単発の事象をも捉えて表示することが可能になってきております。少し古い時代ですと単発の事象は捉えることも難しいことながら、捉えたとしても画面が瞬時に消えてしまうために把握することは非常に困難なことでした。


岩通製オシロスコープ

イメージが分かるように、以下にオシロスコープのサンプル製品を示します。
これはそれほど高価な製品ではありませんが、DC ~ 50MHzの信号を見ることが可能です。また、2チャネルを同時に見ることが出来ます。

2.スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザは、基本的に横軸に周波数、縦軸に振幅を表示する二次元の測定機です。

上図はオシロスコープとスペクトラムアナライザの関係を示しています。オシロスコープは既に説明しましたように、図の左側から見る様に横軸に時間を、縦軸に振幅を表示します。スペクトラムアナライザは、上図の様に表示する軸が異なり、また、この異なる時間と周波数には、この章の最初の「測定の3要素」の所で説明した f(Hz) = 1/t(s)の関係があります。スペクトラムアナライザは、オシロスコープで示す時間をベースにした波形のデータを、波形成分の分析を行うことで周波数をベースに周波数の成分とそのレベル(振幅)を表示します。従って上図は、同じデータを、見方を変えて表示していることになります。その違いは何かと言いますと、オシロスコープは波形、タイミングの分析に向いているのに対して、スペクトラムアナライザは周波数の成分とそれぞれの対数表示のレベルを詳細に見ることが出来ます。また、そのことから広い周波数範囲とレベル(対数なので百万倍以上もの差も)を大局的に捉えることが出来ます。使い方としては、非常に単純化してまとめれば、波形を重要視するのか周波数成分を重要視するかで異なります。

実際の製品としては、やはりデジタル化してデータをメモリに保存し後日比較したり、長時間の観測を行うことが出来るものもあります。

スペクトラムアナライザの測定例として以下のことが考えられます。

電波の測定例 : 実際に空間を飛び交っている電波は非常に複雑です。

  • 非常に広い周波数帯域の測定
  • 種類の多い(変調、電力)信号の測定
  • レベル差が非常に大きい信号の測定
  • 不要な電波(雑音)が多い多種の信号の測定
  • 時々刻々変化している周波数やそのレベルの測定
  • 場所により大きく異なる電波状態の測定

具体的な製品の例として、キーサイト社製のスペクトラムアナライザを以下に示します。

E4440A PSAシリーズ 高性能スペクトラムアナライザ 3Hz - 26.5GHz

USBスペクトラムアナライザとは何?

スペクトラムアナライザの簡易版としてUSBスペクトラムアナライザが出荷されています。一般的にスペクトラムアナライザは一体型ですが、これは以下の様な特徴を持ちます。

  • USBポートと信号の受信部を持つ簡易スペクトラムアナライザ
  • パソコンに接続して使用(単体で使用不可)
  • 表示器及び表示の制御器としてパソコンを使用
  • 一般的に安価

USBスペクトラムアナライザの特徴、まとめ

メリット
  • 小型
  • 軽量
  • 低消費電力
  • 安価
  • 操作容易
  • 膨大な記録の保存可能
デメリット
  • パソコンが必要
  • 利用周波数帯が狭い
  • スキャン時間限定
  • スキャン分解能限定
  • 側波帯雑音(基礎雑音)

用途としては、以下が考えられます。

無線LANはケーブルを使用しませんので非常に便利な通信システムですが、通信時に、不要な電波やノイズの影響を受ける可能性があります。これらの影響を受けると通信が途切れる、スピードが遅くなる、極端な場合は通信がストップする等の障害が発生します。無線LANを使用する無線周波数帯域において具体的に可能性のある不要な電波は、自分が使用しているのと同じ無線LANの電波(同一チャネル、又は隣接チャネル)、ZigBee、家庭内で使用されているコードレス電話、Bluetooth、電子レンジからの漏れ電波、アマチュア無線、各種医療機器、ワイヤレスカメラ、モニタ等の電子機器から発射されるノイズ、その他大電力を扱う機器からの高調波ノイズ等が考えられます。
これらの不要電波障害からの影響をなくすには、電波を分析する必要がありますが、これには電波の成分分析、即ちスペクトラム解析が有効です。上記の不要電波のスペクトラムを、時間軸と周波数に対するスペクトラムの形、分布、密度、規則性のパターン、発生時間帯等を分析することでノイズの原因を絞り込むことが可能になります。これらのノイズを排除するか、又は使用する周波数(チャネル)を変更することにより、安定で高速なWi-Fi通信を行うことが可能になります。

具体的な例として実際の製品を以下に示します。

パソコンに接続を行い、2.4GHzと5GHzの無線LAN
(Wi-Fi)帯域のスペクトラムを見ることが出来ます。
上図は、Wi-Fiの802.11bのスペクトラムを
実際に受信した時のグラフです。

詳細は製品ページをご覧ください。
2.4GHz/5GHz USBスペクトラムアナライザ

3.ネットワークアナライザ

ネットワークアナライザは、高周波回路やマイクロ波回路、またはデバイス等の高周波特性(インピーダンスなど)を測るための装置です。回路や素子(被測定物)に高周波/マイクロ波を入力し、被測定物からの反射、又は通過状態を測って被測定物の電気的特性を測ります。高周波やマイクロ波を取り扱う専門家にとっては非常に重要な測定器です。

4.信号発生器

信号発生器は、電波そのものを測定するものではありませんが、電波を発射したり受信したりする高周波装置の性能を確かめるために便利な装置です。基本的な信号発生器(SG : Signal Generator)は、周波数・電力・変調についての情報を表示する表示器、周波数・電力・変調を設定するためのボタンやダイヤル、出力端子(N型コネクタが多い)を備えております。周波数シンセサイザーを利用しており、非常に狭い周波数ステップで周波数を設定することが可能で、周波数を自動的に連続して変えながら出力することも可能です。

5.周波数カウンタ

無線の送受信機には、色々な周波数の信号が使用されます。しかも周波数の確度、安定度は規格に合致する必要がありますので、測定は重要です。無線機や受信機の研究、設計、検査、保守、修理等で利用されます。

6.高周波電力計

高周波の電力を測定する電力計を「高周波電力計」と言いますが、低周波での測定と異なり、インピーダンスの不整合がないこと、周波数特性、確度等の高周波の特性が優れている必要があります。

7.LCRメータ

LCRメータは、L(インダクタンス)、C(キャパシタンス)、R(レジスタンス)を測定する装置で、電子部品の検査、品質管理、研究開発に有効な汎用装置です。これら、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)等の部品は、無線機器にとって重要な要素で装置の中に多数使用されています。直流での抵抗は、一般的にテスターを用いて行いますが、コイル(L)やコンデンサ(C)のような部品は、高周波で使用し、その特性を発揮しますので、測定に際しては高周波信号を使用する必要があります。