IBS Japan

今日のすべてのマニファクチュアリングリーダの頭に浮かぶのは、得られたデータを総合的に分析し、未来予測、意思決定、企画立案などに役立てるデータドリブン型スマートファクトリを可能な限り迅速に構築する方法です。 効率の向上、コスト削減、スケーラブルな運用、および優れたリスクマネージメントは、スマートファクトリを構築するためには、紛れもない重要な価値ある要件です。そのため、多くのマニファクチュアラーがデジタル変革への旅をスタートしました。しかしながら、リサーチ1によるとスマートファクトリのイニシアチブの実装に数年が経過した後でも、85％以上の企業は、導入を成功させることができません。それらを妨げる主な障害の1つは、IT/OTの収束（収束）の問題です。

従来、IT (Information Technology)およびOT (Operational Technology)は、並行して実行されてきました。ITチームは、毎日のファクトリの運用中において、注文から出荷までのプロセスをサポートする様々なビジネスアプリケーションを管理しています。OTチームは、資材調達から生産、倉庫保管までのバックエンド運用が円滑に実行するための責任があります。しかし、これら2つのチームが連携することはめったになく、ネットワークの切断、データ損失、またはセキュリティ侵害などの特定の問題を処理するためにのみ機能します。これらのソリューションに対処するだけでも、多くの時間を費やします。

今日、スマートマニュファクチャリングは、情報と生産の間のサイロを破壊しました。並行して活動していたこれらの2つのチームは、企業に新しい機能を構築するために収束する必要が生じています。これには、柔軟なサプライチェーンの構築、容量使用率の最適化、予知メンテナンスによるダウンタイムの最小化といった同じ目的と目標を共有しています。これらの革新的なアプローチが実を結ぶためには、ITとOTの経験と専門知識を組み合わせた場合において成功します。ここで、IT/OT収束のフロントランナーとして、またクライアントがデジタルトランスフォーメーションで成功を収めることができた経験からスマートマニュファクチャリングプロジェクトにおけるIT/OTコラボレーションを実現するための3つの障壁を特定しました。

1.データに対する異なる焦点

スマートマニュファクチャリングへの第一歩は、データ収集です。しかしながら、データ分析を担当するITチームは、ファクトリの運用に関する理解が不足しているため収集すべきデータを正確に把握することができません。一方、スムーズな生産を優先するOTチームは、ITが分析を必要とする十分なデータを収集できない可能性があります。さらに悪いことに、OT機器はそれぞれのベンダーが提供する独自のプロトコルを頻繁に使用しています。中規模のファクトリで使用されるプロトコルの数は2桁にも達し、データ収集がさらに複雑になります。スマートマニュファクチャリングへの最初のステップが通常、最も難しい理由は、これが原因です。

経験豊富なプロジェクトリーダは、ITとOTの担当者が早い段階ですべての議論に参加できる環境を整備する必要があります。これにより、データ収集とデータ分析のニーズを一致させることができます。より積極的な方法は、ゼロから新しい部門（例えば、マニファクチュアリンググループの下の新しい情報ユニット）をセットアップして、ITチームとOTチームが同じ目的を共有し、単一のチームとして運営することを保証することにあります。

2.異なるシステム開発方法論

ITプロフェッショナルにとって、システムアーキテクチャの計画は極めて重要です。ユーザの要件に基づいてカスタムシステムの設計および開発を行います。これらのユーザの要件は、事前に明確に指定する必要があります。設計プロセス中に繰り返される変更や微調整には誰でもが抵抗します。対照的に、行動や動作が一致するユニゾンで実行される様々なシステムの相互運用性と信頼性を確保するためにOTのエキスパートは、モジュール設計手法の採用、パイロットランの実施、テスト結果に基づくモジュールの調整に慣れています。必然的に、テストと調整の戦略は、ユーザの要求が高まる可能性があります。ITチームは、新しい要件を満たすためにシステム設計を繰り返し変更する任務を負い、多くの場合、両チーム間の摩擦につながります。"臨機応変"の開発方法論は、ITプロフェッショナルに新たな課題を提示します。OTのプロフェッショナルにとって開発作業を開始する前にITの同僚にシステムテスト方法と潜在的な調整について通知しておくことにより開発フェーズで発生する様々な変化に取り組む準備ができ、プロジェクトの成功を確実にすることができます。

3.異なるシステムのメンテナンス要件

血と苦労と涙と汗のシステムの導入に入った後、システムの管理とメンテナンスに関するコラボレーションには、さらに別の課題が発生します。小さな問題が時間の経過とともに災害に繋がる可能性があるため、訓練を受けたITプロフェッショナルにとしては、すべての問題をすぐに解決する必要があります。しかしながら、マニファクチュアリング企業にとっては、競争力を維持するために継続的で中断がなく生産を実行することが必要不可欠です。OTのプロフェッショナルは、軽微な問題にすぐに対処するのではなく、生産ラインが稼働していない場合にのみ修正を選択します。また、変更やアップグレードを実装する前に、生産に悪影響を与えないように十分に細心の注意を払ってすべてをテストします。それ以外の場合は、いくつかの欠陥はありますが既存のプロセスを続行することを優先します。

物事を見る1つの方法として、スマートフォンユーザのようなITユーザを見ることです。頻繁なソフトウェアの更新、および更新プログラムに伴う新しいシステム機能、拡張機能、および修正に慣れています (そして、それを楽しみにさえしています) 。一方、OT志向の担当者は、列車のオペレータに似ています。彼らは、システムまたは手順の変更について非常に慎重です。広範なテストを行わない場合、小さな変更によって予期しない事故や問題が発生し、本格的なリスクに発展する可能性があります。そのため、最初からシステムを設計する際には、ITチームとOTチームが明確にコミュニケーションを取り、システムのメンテナンスの実行方法を綿密に整合する必要があります。

デジタルマニファクチュアリングの真のパワーを引き出すには、生産データをモバイルデバイスでアクセスできる速報なレポートに変換したり、ロボットアームや高速オートメーションシステムを購入したりする以上に時間がかかります。スマートファクトリの約束を果たし、その恩恵を実現するためには、真のコラボレーションが必要です。これを実現するためにマニファクチュアラーは、うまい関係でスタートするためにITとOTのプロフェッショナル間の意思を疎通させる必要があります。統合されたIT/OTの能力と経験を備えたチームを生み出すことでマニファクチュアラーは、デジタルトランスフォーメーションで成功するために必要な基盤を作り出すことができます。

参考資料：
1."Smart factories @ scale", Capgemini, 2019.