技術情報
産業用ネットワークソリューション
産業用イーサネット設置時のSTPケーブルとグランドループ/サージ対策
ノイズ発生がある産業環境のファクトリなどで産業用イーサネットスイッチを設置する場合、ノイズの影響を避けるために、一般的にUTPケーブルの代わりにSTP(Shielded Twist Pair)ケーブルを使用します。しかし、STPケーブルを使用してイーサネットデバイス間を接続する場合、ケーブルのシールドにより、デバイス間のグランドコネクションパスによりグランドループが発生します。その結果、イーサネットポートを介してグランド電流がデバイス間に流れ、デバイスを損傷させる可能性があります。
それを避けるために、シールドケーブルを使用する場合は、片側にメタルタイプのRJ45コネクタを使用し、他端には、UTPなどで使用するプラスチックの非メタルコネクタを使用することをお勧めします。なお、短距離(例えば、同じキャビネットに設置された2つのデバイス間)接続の場合では、シールドケーブルの両端が同じグランドポイントであるためグランドループの発生がなく、両端をメタル製のSTPケーブルを使用することができます。
- STPケーブル
- メタルコネクタ付STPケーブル
グランドループ/サージ保護の重要性
IoTによる「全てをネットワークに接続!」の合言葉に、世界中の企業でネットワークベースの自動化が急速に標準化してきています。これは、産業分野でもその波が押し寄せてきています。CNC、工作機械、カードリーダ、バーコードリーダ、プリンタ、計測器、PLC、センサ、UPS、テスタなどのシリアルインターフェースデバイスを デバイスサーバー や USB - シリアルコンバーター 経由で高速のLANネットワークに接続することにより自動化システムのネットワーク化が実現でき、品質管理、製造工程の監視、自動データ収集システム、リアルタイムコスト管理などに応用されています。
ところが、産業分野においては、現場に大型モータ、高電圧機器、高圧スイッチなどが設置されているため、電気的なノイズが多い環境であることから、ノイズ対策を考えないと信頼性の乏しいシステムになる恐れがあります。特に、ネットワークが広い敷地内に敷設されている場合、ネットワークに接続されている電子デバイスは当然ながら異なる電源から電源の供給を受けています。電源は良好なアースをとっていたとしても、異なる電源を使用しているとアースグランド間で電位差が生じます。電位差とは、基準の電位に対する電気信号の差であり、電位の基準となるところはグランドです。基準の電位が揺らぐとノイズを生じます。多くのデバイスがネットワークに接続されている場合、各デバイスのグランドが相互に接続されているためにループをつくります。これはグランドループと呼ばれる雑音となります。このように電位差によるグランドループが生じるとRS-232C、RS-422/485、PCのネットワークカードといったインターフェースの信号ラインに限界以上のオーバーサージ電圧がかかり、データ伝送のエラーが発生や最悪の場合は、貴重なデバイスを破壊してしまい生産ラインのストップにも繋がりかねません。
また、屋外に接続されている通信線、または電源入力ラインは、夏場に雷の影響を受けやすいといえます。雷のように、ナノ秒単位の高速で瞬間的に高い電圧エネルギーは、サーキットブレーカあるいはヒューズを入れても検出できず素通りです。例えば、屋外に置かれたタイムレコーダ、監視用Webカメラに繋がっている通信線に雷が直接あるいは間接的に落ちた場合、接続されたデバイスのI/OカードのICが瞬時に破壊されてしまいます。夏になると故障し、冬は問題がないというケースです。
サージを防止する方法
1.サージプロテクタを各機器のインターフェースおよび電源ラインに適切に取り付ける方法です。この場合、良好のアースをとる必要があります。下図は、RS-232Cデバイス間ケーブルにサージプロテクタを使用した例です。
2.データラインにフォトカプラー回路を設け、電気⇒光変換、光⇒電気変換による光学的アイソレーションを行う方法です。シリアルインターフェースカードには、最初からフォトカプラーによる光学的なサージプロテクション回路が組み込まれていることが多いです。
3.長距離に信号を伝達する場合には、電気信号を一度デジタル信号に変換して光ファイバを用いて信号伝送を行った後、再度デジタル信号を電気信号に戻す方法です。一般的に メディアコンバータ といわれています。
RS-232C, RS-422/485⇒光ファイバ変換。グランドループ、EMI、RFIなどの影響もなく、距離を2km~20kmまで延長できます。