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大型トラック業界における車両通信のCAN FD/SAE J1939-22への移行
最近、サイバーセキュリティと機能の安全性が最近、ほとんどの輸送関連産業において主要なテーマとなり開発の焦点となっています。多くの企業は、悪意のある侵入者から車両を保護する一方で、今日も利用可能で増え続けるコネクティビティを活用するために取り組んでいます。これ加えて、電子制御システムが毎年より多くの車両に関与し、Electronic Control Units (ECU)がアクセラレータ、ブレーキ、ステアリングに日常的に接続されているという事実から見ても、車両のサイバーセキュリティがなぜそれほど重要になったかを理解するのは容易です。
SecOC(Secure On-board Communications)は、車両内のECU間の通信を保護することに焦点をあてたサイバーセキュリティの1つの側面です。セキュリティとは、侵入者のアクセスを拒否することですが、侵入者が侵入した場合に貴重品を簡単にピッキングされるように放置しておくことは、好ましくありません。
Society of Automotive Engineers (SAE)、CAN in Automation (CiA)、International Organization for Standardization (ISO) などの組織は、CAN (Controller Area Network) システムに影響を与える形で、これらのセキュリティメカニズムを既存の車両規格に統合しています。Heavy Duty (HD) 大型トラックとSAE J1939規格を例にとると、従来のCANからCAN FD (CAN with Flexible Data rate)への移行は、サイバーセキュリティに必要とする帯域幅拡張への要求によって推進されています。従来のCANでは、1つのフレームにのせられるデータ長が8バイトのデータ制限があるのでメッセージに重要なサイバーセキュリティコンテンツを追加する余地がありませんでした。これに対しCAN FDでは、より高いビットレートと最大64バイトの長いフレームをサポートすることができます。
HDトラック業界でのJ1939-22A: CAN FD Data Link レイヤ - SAE International ※(2021年7月改版)が公開されると共にCAN FDへの移行が進められています。
サイバーセキュリティに加えて、SAE J1939-22 (64バイトのデータフィールドを使用するトランスポート層プロトコルを含む、J1939 メッセージの CAN FDフレームへのマッピングを指定)では、車両の電子機器を保護するための第2のパスであるFunctional Safety (FuSa)も考慮されています。FuSaは、車両の安全関連の不具合の防止や検出をするもので、これに関連する異なる規格がすでに公開され、開発中です。SAE J1939-22規格を作成したタスクフォースは、まだ定義されていないセキュリティ/セーフティサービスが使用するためのスペースを確保しました。この情報は、他のタスクフォースや他のドキュメントに委ねられ、規格の一部として定義していません。
標準化されたメッセージに割り当てられたスペースと、このスペースをネットワーク上のセキュリティとセーフティを提供するために使用できる方法により、トラックの規格は、通信を保護する主要な自動車戦略を採用しています。現在、進行中のタスクは、暗号化を使用して通信を保護する方法、フレッシュネスカウンタを組み込む方法、およびSecOCとFuSaを近くのトラックで実現するための鍵管理を行う方法を定義することです。ハッキングの技術は、通信の安全性を確保する技術に匹敵する速さで進歩しているため自動車開発に携わるスピードはいつまで経っても落ちることはないでしょう。
- Bryan Hennessy
- Kvaser AB テクニカルパートナーマネージャー
※ J1939-22A: CAN FD Data Link レイヤ - SAE International
SAE J1939のドキュメントは、オンロードまたはオフロードで使用される小型軽量、中型、大型車両、および車両から派生したコンポーネント(発電機セットなど)を使用する適切な固定アプリケーションを対象としています。対象となる車両には、オンハイウェイおよびオフハイウェイトラックとそのトレーラー、建設機械、農業機械および機械が含まれますが、これらに限定されるものではありません。
これらのドキュメントの目的は、電子システムのためのオープンな相互接続システムを提供することです。標準アーキテクチャを提供することによって電子制御ユニットが互いに通信できるようにすることです。この特定のドキュメント SAE J1939-22 では、ISO 11898-1 (2015 年 12 月) で定義されているフレキシブルデータレートを使用したデータ リンク層について説明します。
CANのフレキシブルデータレート機能(一般にCAN FDと呼ばれる)は、機能的安全性、サイバーセキュリティ、拡張トランスポート機能、およびSAE J1939DAとの下位互換性を可能にするためにトランスポート層として実装されています。