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2024/09/26
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既存の電力システムをIEC 61850 ネットワーク統合のために改修するプロトコル変換の課題とセキュリティ問題への対応

電力サービスの効率性、信頼性、サステナビリティ(持続可能性)を向上させるために、変電所、配電自動化システム、分散型電源のオペレーション制御などIEC 61850の適応分野は広がっています。そのような状況の中で、既存のレガシー電力システムをそのまま使用続けることは、時代遅れでありまた、問題もあります。しかし、レガシー電力システムを廃棄して、ゼロから新規に構築するには高額な費用が発生します。レガシー電力システムを IEC 61850 スマートグリッドテクノロジーでレトロフィット(改修)すれば、電力システムを完全に構築するのに比べて、費用対効果に優れた実用的なソリューションが実現します。IEC 61850規格には、効率やレジリエンス(耐障害性)の向上など多くの利点がありますが、実際、レトロフィットするとなると、レガシー電力システムをIEC 61850ネットワークに統合するためのプロトコル変換(SCADAやエンドデバイスで一般的に使用されているDNP3、IEC 101、IEC 104など、多くのプロトコルの変換)また、セキュリティ上の懸念への対処などが多くの課題が存在します。これらの課題を克服するには、綿密な計画を立案し、変電所のレトロフィットを合理化するプロトコルゲートウェイなどの適切なツールやテクノロジーを採用する必要があります。

スマートグリッドとは?

スマートグリッドとは、さまざまなテクノロジーを統合して、電力サービスの効率性、信頼性、サステナビリティ(持続可能性)を向上させる高度な電力網です。この複雑で規模の大きいシステムは、発電、送電、配電、消費など複数のサブシステムで構成され、すべてが高度な通信および制御テクノロジーによって相互接続されています。スマートグリッドは、これらのテクノロジーを使って電気の流れをリアルタイムで監視および管理し、再生可能エネルギー源の統合を可能にし、電力網全体のレジリエンスを向上させます。スマートグリッドの進化における最も重要なトレンドの1つは、IEC 61850プロトコルの採用です。このプロトコルは、現在、エネルギーシステムの規格として広く受け入れられており、通信と相互運用性の包括的な枠組みを提供しています。

IEC 61850の幅広い採用

IEC 61850 は、エネルギーおよび電力システム全体の要件を満たすために特別に設計されている点で、DNP3 や IEC 101/104 などの他のエネルギープロトコルとは一線を画しています。IEC 61850は、特定の側面に焦点を当てた他のプロトコルとは異なり、デバイスコンフィギュレーション、データモデル、通信、およびコンフィギュレーションマネージメントをカバーする統合規格を提供します。この統合されたアプローチにより、最新の電力システムの効率的なオペレーションとマネージメントに不可欠な、より一貫性のある統一されたシステム設計が保証されます。
統一されたプロトコルの利点が認識されることで、世界中の国々は、IEC 61850規格にポリシーを合わせるようになってきています。そして、スマートグリッドが進化するに伴い、既存のインフラストラクチャをIEC 61850に統合することへの重要性が認識されるようになってきています。

IEC 61850システム統合の課題

現在のすべてのインフラストラクチャをIEC 61850対応システムに置き換えるには、膨大の資金を要するため、既存の電力システムをレトロフィットすることは、現在の資産の価値を最大化するためにも望ましい方法であるといえます。しかしながら、レガシー電力システムをIEC 61850通信ネットワークに接続することは、フィールドサイトではさまざまな産業プロトコルが使用されているため、複雑になり、適切なゲートウェイを使用することが必要です。さらに、IEC 61850デバイスを既存のネットワークに導入すると、深刻なセキュリティ上の懸念も生じます。

課題1:複雑なプロトコルに圧倒される可能性がある

レガシー電力システムをレトロフィットする場合、SCADAやエンドデバイスで一般的に使用されているDNP3、IEC 101、IEC 104など、多くのプロトコルに遭遇します。場合によっては、Modbus PLCの統合が必要になることが必要になることがあります。システム内で使われている、これらのレガシーのインテリジェント電子デバイス(IED)は、すべて同時に接続し、管理する必要があります。オペレータは、プロトコル変換の課題に直面するだけでなく、すべてのデバイスを統合するという重要なタスクにも直面することになります。従って、統一されたプロトコルやポリシーを含むIEC 61850ネットワークの機能は、非常に重要です。

課題2:ダウンタイムを一切許容しないゼロトレランス

重要な電力システムでは、ダウンタイムは許されません。そのため、機器の故障、自然災害、人為的ミス、サイバー攻撃、およびその他の外部要因に対する保護が必要となります。フィールドのオペレータは、経年劣化、絶縁破壊、機械的な問題、過熱などのさまざまな要因により、デバイスの故障に遭遇する可能性があります。落雷や地震などの外部要因は、機器が故障し、ネットワークに損害を与える可能性があります。予期しないダウンタイムが発生した場合は、根本原因を迅速に特定し、ネットワークを通常の状態に迅速に復元することが重要です。

課題3:進化する脅威の状況

重要なインフラストラクチャ環境でのサイバー脅威の頻度は、増加を続けており、特に、変電所は悪意のある者にとって絶好なターゲットとなっています。サイバー攻撃には、単一のネットワークノードのデフォルトパスワードをクラックするだけで、サイバー攻撃が可能になります。ネットワークが侵入されると、ハッカーは、プレーンテキストのコンフィギュレーションファイルを悪用して攻撃を仕掛けたり、DDoS攻撃でインフラストラクチャを圧倒したりすることができます。従って、常にオペレータは、サイバーセキュリティのリスクに警戒し、効果的な方法で最悪のシナリオに備える必要があります。

変電所のレトロフィットを容易に行えるように設計されたプロトコルゲートウェイ

変電所の近代化には、広範なリソースと多様な専門家グループによる多大な時間と作業が必要となります。従って、変電所のレトロフィットを簡素化し、便利なツールで共通の課題に取り組み、サイバーセキュリティリスクを軽減することが、電力システムのインテリジェンスを強化するための3つの重要な要件となります。

これら3つの基準に対処する鍵は、適切なプロトコルゲートウェイを選択することです。変電所のレトロフィット時にプロトコル変換を容易にするために、MGate IEC 61850ゲートウェイなどの特定のプロトコルゲートウェイは、これらの要件を念頭に置いて特別に設計されており、多くの便利な機能が組み込まれています。

  1. 迅速な設定: IEC 61850 ネットワークに接続する必要があるレガシーシステムは、DNP3、IEC 101、IEC 104、Modbus などのプロトコル通信を一般的に使用しています。複数のプロトコルを使用するIEC 61850通信の設定は、特に、異なるプロトコルを実行する異なるベンダーのデバイス間の相互運用性を確保するために使用される標準化されたファイルフォーマットであるSCLファイルを編集する場合、非常に複雑になる可能性があります。MGate IEC 61850ゲートウェイは、ユーザフレンドリーなSCLファイル生成機能を使用して、複雑なプロセスを簡素化し、追加のエンジニアリングツールに関連するコストと作業を削減し、デバイスコンフィギュレーションデバイスを合理化することができます。、根本原因を迅速に特定する診断ツールが組み込まれています。さらに、テストモード(IEC 61850-7-4)により、オペレータは、実装前にコンフィギュレーションをシミュレートおよびテストできるため、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑え、継続的なオペレーションを確保できます。テストモードを使用しない場合、オペレータは、各ノードを手動で切断、再コンフィギュレーションSCADAやエンドデバイスで一般的に使用されているDNP3、IEC 101、IEC 104など、多くのプロトコルに遭遇します、および再接続するためにかなりの時間を費やすことになります。
  2. ダウンタイムの最小化: 通信エラーが発生した場合、迅速な対応が必要です。MGate IEC 61850ゲートウェイには、根本原因を迅速に特定する診断ツールが組み込まれています。さらに、テストモード(IEC 61850-7-4)により、オペレータは、実装前にコンフィギュレーションをシミュレートおよびテストできるため、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑え、継続的なオペレーションを確保できます。テストモードを使用しない場合、オペレータは、各ノードを手動で切断、再コンフィギュレーションSCADAやエンドデバイスで一般的に使用されているDNP3、IEC 101、IEC 104など、多くのプロトコルに遭遇します、および再接続するためにかなりの時間を費やすことになります。
  3. セキュアな通信: 変電所にとってサイバーセキュリティは、最も重要です。変電所ネットワークのサイバーセキュリティを強化する  ために、MGate IEC 61850ゲートウェイは、IEC 61850 MMS通信暗号化(SSL)を提供し、IEC 62443およびNERC CIP規格に準拠する通信プロトコルの暗号化を組み込んでいます。さらに、MGateは、組み込みの検出機能を通じて、DDoS防御をサポートし、異常なパケットを検出し、オペレータに警告し、即座に対応することができます。最後に、これらのIEC 61850プロトコルゲートウェイは、コンフィギュレーションファイルを暗号化することにより、エクスポート中に不正アクセスや改ざんからファイルを保護することができます。

結論

スマートグリッドの進展とIEC 61850規格の広範な採用に伴い、既存の変電所のレトロフィットは、必要不可欠になっています。レガシー電力システムを IEC 61850 スマートグリッドテクノロジーでレトロフィット(改修)するには、ネットワークを完全に再構築することなく、現在のインフラストラクチャをアップグレードして最新の基準を満たす必要があります。このアプローチは、コスト効率が高く実用的であり、電力サービスの効率、信頼性、持続可能性が向上します。このレトロフィット変革を推進する最前線に立っているのがパワーSCADAシステムとフィールドデバイス間の通信を容易にするMGate IEC 61850 プロトコルゲートウェイを使ったソリューションです。レガシーの変電所で使用されるデバイスは、大きく以下のタイプに分類されます:

  • 標準産業プロトコルを使用するデバイス
  • 独自プロトコルを使用するデバイス
  • カスタムソフトウェアアプリケーションでパフォーマンスを最適化するデバイス
キュアなIEC 61850ゲートウェイ - イメージ

(セキュアなIEC 61850ゲートウェイを使い、レガシー変電所をレトロフィット)

このレトロフィットを実現する重要な役割を担うための中核となるゲートウェイは、Modbus、DNP3, IEC 61870-5-101/104などのさまざまな異なる産業プロトコルを使用するデバイスのプロトコルを変換し、すべてのデバイスを統合するという重要なタスクを実行します。このゲートウェイの使用により、レガシーのインフラストラクチャを最新のスマートグリッドシステムとシームレスに統合することを保証します。さらに、このゲートウェイは、セキュリティを優先しプロトコルの変換を簡素化、ユーザフレンドリーな設定ツールを提供することで、より効率的で信頼性が高い、将来に備えたエネルギーインフラストラクチャを実現します。よりスマートなグリッドに向けて前進し続ける中、これらのテクノロジーを取り入れた変電所のレトロフィットプロジェクトは、既存資産の価値を最大化し、エネルギーマネージメントの未来へのスムーズな移行を確実にするために不可欠です。

レトロフィットプロジェクトに使われるIEC 61850ゲートウェイの詳細については、製品ページをご覧ください:

  • MGate 5192-T:IEC 61850-to-DNP3/IEC 101/IEC 104/Modbusゲートウェイ
  • MGate 5119-T:DNP3/IEC 101/IEC 104/Modbus-to-IEC 61850ゲートウェイ