技術情報

IPベースのCCTVシステムは、最新の列車監視システムを成功に導く決定的な要素です。乗客の安全を確保することに加えて、これらのシステムは、適用範囲を拡大し、運用効率を向上させるミッションクリティカルな情報を提供しています。現在、IPベースのカメラとNVRコンピューティングプラットフォームは、鉄道システム全体において多くの場所に導入されています。

IPベースのCCTVはほぼ10年前のものですが、特にハイパフォーマンスカメラの導入により、テクノロジーは近年かなり成熟しています。また、IP CCTVシステムは列車システムのより多くの場所に導入され、より優れた設計とより高いパフォーマンスの必要性が確認されています。これらの新しいビデオ監視アプリケーションは、IP CCTVカメラと、カメラをサポートする基盤となるネットワークインフラストラクチャに高い信頼性が要求されます。それに加えて、カメラは過酷な環境条件下で高解像度ビデオストリームを配信することが期待されています。最新のIP CCTVカメラの多くは、これらのカメラのハイパフォーマンス要件を制限する可能性のある既存のネットワークに導入されています。Train-to-Ground(T2G)ネットワークを強化できるソリューションは、次世代のハイパフォーマンスIP CCTVカメラをより適切に利用できるため、最も需要があります。この記事では、鉄道システムに次世代のビデオ監視機能を導入する際に、列車オペレータ(事業者)とシステムインテグレータが直面する課題について解説します。

多様なカメラの導入場所と昼夜のビジョン

列車オペレータはオンボードカメラのカバー範囲を拡大することにより、IP CCTVカメラの可能性を最大限に引き出すことができます。列車システム全体をカバーするには、さまざまなフォームファクタ、異なるマウンティングのニーズのサポート、多様な場所に導入できるIPカメラが必要です。これに加えて、鉄道システムのIP CCTVは、設置条件や設置場所に関係なく、明るい環境と暗い環境で継続的なパフォーマンスとクリスタルクリアな画像品質を提供する必要があります。また、照明条件が急速に変化する環境で高品質の高速画像を実現することが期待されています。例えば、明るい環境から暗い環境への移行、および列車がトンネルを通過した後の移行はスムーズでなければなりません。

過酷なオンボード環境に対応する振動、湿度、防塵IPカメラ

鉄道システムに使われるIP CCTVカメラは、極端な温度、湿度、振動、または埃が発生する環境に導入されます。列車オペレータは、列車が操車場で待機している場合でも、常にオンボードの状態を監視できることを期待しています。このため、カメラはEN 50155 T3(-25～70℃)またはTX(-40～70℃)クラスの温度要件を満たす必要があります。列車に使用されるカメラは、一貫したパフォーマンスを確保し、機器の損傷を防ぐために、EMIとサージ保護を備えている必要があります。鉄道アプリケーションにおける電磁適合性の最小要件は、EN 50121-3-2またはIEC 62232-3-2規格により定義されます。これらのカメラの一部は列車の外部で使用されるため、雨や霧の条件で高品質の画像を提供するために、デミスト(de-mist)機能をサポートする必要があります。車両の場合のように、極度の振動下でセキュアな信頼性の高いディスクアクセスは、NVRコンピュータがデータの完全性を維持し、データ損失を防ぐために絶対に不可欠です。

テクノロジーギャップ

現代の鉄道車両システムにおける最大の課題の1つは、高速で走行する列車と線路沿いの駅との間に強固で信頼性の高い通信ネットワークを確立することです。ネットワークは、CCTV、PA、アラーム、およびコントロールシステムをすべて同じネットワーク上でサポートするために、ハイレベルの帯域幅と可用性を提供する必要があります。このすべては、列車のオペレータの総所有コスト(TCO)の最小限の増加で達成されなければなりません。例えば、自動列車運行システム(automatic train operation systems)は、中央コントロールルームが直接オンボード列車のオペレーションをコントールおよび管理ができるように、ワイヤレスの列車と地上間通信に依存しています。

鉄道ネットワークで高いレベルのパフォーマンスを実現するには、鉄道オペレータが高いパフォーマンスを確保するためにネットワークを微調整できる高度なスキルを持つITネットワーキングの専門家チームを維持する必要があります。このオプションは、ほとんどの列車のオペレータにとって競合他社に真似できない核となる能力であるコアコンピテンシーがないため、実現が不可能です。このようなチームを管理するとなると、運用コストも増大します。産業用自動構成機能(industrial auto-configure function)を備えたネットワークデバイスとシステムは、特にネットワークデバイスを大量に導入する場合にオペレータにとって大きなベネフィットを提供します。車両間のネットワークコネクションを自動的に再構成できるインテリジェントなテクノロジーは、特に構成が再配置されるシナリオで非常に求められています。

より意欲的なオペレータは、乗客にオンボードエンターテインメントとインターネットアクセスを提供することを見据えています。これにより、列車と地上間リンクの需要が高まります。これらの増大する要件を満たすために、ワイヤレスデバイスは、列車と地上間通信に依存する新しいアプリケーションのすべてをサポートするために十分な帯域幅を一貫して提供できる必要があります。高スループットとミリ秒レベルのハンドオーバータイムを備えた高速でセキュアなローミング、および列車と地上間のセキュアなオペレーションに必要なデータのシームレスな換のために必要な信頼できるネットワークは、T2Gネットワークで求められる最小の機能です。

異なるベンダーの製品を統合するという課題

鉄道システムのために完全なIP CCTVカメラソリューションを提供できるベンダーは多くありません。つまり、システムインテグレータとオペレータは、これらのマルチベンダーコンポーネントを基盤となるイーサネットネットワークに統合し、それらを連携させて可能な限り最高のパフォーマンスを引き出すという困難な課題を抱えています。さらに、既存のシステムとの相互運用性は、列車システムを改修する際の課題です。 EN 50155、IEC 62580-1、IEC 60571などの鉄道業界規格は、製品が鉄道システムのために遵守しなければならない規格、特に車両の要件を定義しています。これらの業界規格に準拠し、容易な産業用自動構成テクノロジーを提供する製品は、コンフィギュレーションタイム、コスト、潜在的な人的エラーを削減するのに大いに役立つため、システムの運用は非常に信頼性が高く効率的です。

車両のための完全なEN 50155準拠ソリューション

IP CCTVソリューションには、IPビデオ製品、ネットワークスイッチ、ワイヤレス通信、ビデオマネージメントソフトウェア、および鉄道車両アプリケーションのためのNVRプラットフォームが含まれます。MoxaやVIVOTEK は、異なるタイプのEN 50155認定IPカメラを提供します。これらは、構成IPカメラ、バックビューIPカメラとして配置され、さらに隠しIPカメラとしてフラッシュマウントされます。すべてが堅牢で、M12イーサネットコネクタ、PoE入力が付属しており、主要なEN 50155およびEN 50121-3-2規格に準拠しています。さらに、H.264形式とMJPEG形式の両方で最大1920×1080のビデオ解像度をライブ表示とビデオ録画に利用できます。

MoxaはIPカメラに加えて、EN 50155 M12イーサネットスイッチ、EN 50155 NVR、EN 50155ワイヤレスAP、およびコンピュータを提供しています。これらの製品を組み合わせて、完全なEN 50155 IP CCTVシステムを構築できます。コンフィギュレーションを簡素化するために、すべてのEN 50155製品には、ネットワーク設定とデバイス構成を自動化するMoxa FLI™コンフィギュレーションテクノロジーが搭載されています。

Moxaが提供する多くのEN 50155 製品

詳細については、カタログ「カタログ：スマートな鉄道を実現する統合IPソリューション」をご覧ください。